Xiaomi初の電気自動車として中国で発売されたXiaomi SU7 Ultraですが、日本でもイベントで展示されるなど積極的な展開を行っており日本発売も注目したいモデルとなっていました。
ですが、昨今では中国での死亡事故が多発するなど安全性に関する懸念がいくつかあり、ユーザーを驚かせてくれるスペックとは裏腹に批判を浴びてしまっているのも事実です。
この記事ではXiaomi SU7 Ultraの日本発売について考察していきます。
Xiaomi SU7 Ultraとは何者か?
まず、このクルマがどれほど異常なスペックを持っているかをおさらいしましょう。シャオミが「ポルシェ・タイカン・ターボGT」を明確なライバルに据えて開発したこのモデルは、まさに「走るスマートフォン」でありながら「地上最速の怪物」です。
驚異の「1500馬力オーバー」

SU7 Ultraは、シャオミ自社開発のV8sモーターを含む3モーター構成を採用しています。
- 最高出力: 1548馬力
- 0-100km/h加速: 1.98秒
- 最高速度: 350km/h以上
この数字は、数億円クラスのハイパーカーに匹敵します。さらに、ドイツのニュルブルクリンク北コースにおいて、プロトタイプが6分22秒091というタイムを叩き出し、4ドアセダンとして世界最速の称号を手にしました。
スマホメーカーならではのエコシステム

内装には16.1インチの巨大なディスプレイが鎮座し、シャオミの独自OS「HyperOS」が動作します。スマホとの連携は極めてスムーズで、家に着く前に車内から自宅のエアコンをつけたり、逆にスマホの画面をそのまま車載モニターに投影したりといった、既存の自動車メーカーには真似できないシームレスな体験を売りにしています。
暗雲立ち込める安全性と中国での死亡事故
しかし、その華々しいデビューの裏で、SU7シリーズを巡る**「安全性」への疑念**が噴出しています。中国国内では、SU7に関連する重大事故が相次いで報告されており、これが日本進出を阻む最大の障壁となっています。
相次ぐ衝突・炎上事故
特に衝撃を与えたのは、自動運転支援機能「NOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット)」作動中の事故です。
2025年、中国の高速道路で時速116kmで走行していたSU7が障害物を検知できず、手動運転に切り替わった直後に衝突。乗車していた3名が死亡するという悲劇が起きました。
また、四川省成都市ではSU7 Ultraとみられる車両が制御を失い衝突・炎上。この際、「衝突時に格納式ドアハンドルが展開せず、車内に閉じ込められて焼死した」という遺族の証言が報じられ、設計上の欠陥を指摘する声が噴出しました。
なお、中国当局はこの格納式ハンドルを規制するという報道もあり、これまで以上に安全性が求められる時代になりつつあります。
「速すぎる」ことの弊害
SU7 Ultraは1500馬力を超えるパワーを持ちますが、これを制御するシャシーやブレーキ、そして何よりドライバーの技量が追いついているのかという議論があります。中国のSNS上では、試乗中にコントロールを失う動画や、サーキット走行中にブレーキがフェードしてクラッシュする映像が拡散され、「スマホメーカーにここまでのハイパワー車を作るノウハウがあるのか?」という厳しい目が向けられています。
あくまでサーキットで走るだけならいいのかもしれませんが、公道で扱えるほどのパワーでもないですし批判を浴びてしまうのも仕方のないところかもしれません。
日本発売が「絶望的」と言われる4つの理由
こうした背景を踏まえると、日本での発売には極めて高い壁が存在します。
① 厳格な安全基準と型式指定
日本の国土交通省による「型式指定」を受けるには、極めて厳しい衝突安全試験や自動運転システムの検証をクリアしなければなりません。中国国内で「ドアが開かない」「システムが誤作動する」といった疑惑が持たれている現状では、日本の規制当局の審査を通るには膨大な改良と時間が必要になります。
② メンテナンス・インフラの欠如
自動車は売って終わりではありません。1500馬力のEVを維持するには、高度な技術を持つ整備士と専用の診断設備が必要です。シャオミは日本でスマホの販路は持っていますが、自動車のディーラー網や修理拠点はゼロです。テスラの例を見ても、サービス網の構築には年単位の時間がかかります。
③ 右ハンドル仕様の開発コスト
日本市場は世界的に見ても特殊な「右ハンドル」圏です。中国市場だけで爆発的に売れている現状、あえてコストをかけて日本専用の右ハンドル仕様を開発する優先順位は低いと考えられます。
④ ブランドイメージの悪化
前述の死亡事故や炎上事故のニュースは、日本の消費者に強い警戒心を植え付けました。「安くて高性能」はスマホなら歓迎されますが、命を預ける自動車において「信頼性への疑念」は致命的です。
日本での「Xiaomi EV」はどうなる?
それでは、私たちは日本でXiaomiの車に乗ることはできないのでしょうか? 今後の展開を予想すると、いくつかのシナリオが見えてきます。以下の3つとなります。
シナリオA:並行輸入による「超限定」導入
SU7 Ultraそのものは無理でも、マニア向けに少数の車両が並行輸入される可能性はあります。しかし、これは公道を走るための車検取得が非常に困難であり、あくまで「コレクション」や「サーキット専用」に近い形になるでしょう。
シナリオB:普及モデル(SU7標準版)の導入検討
Ultraのようなモンスターマシンではなく、より現実的なスペックの「SU7」や、今後発表されるであろう「電動SUV」モデルを、BYDのような形で日本に導入する道です。ただし、これも安全性の懸念が完全に払拭され、右ハンドル化が実現した後の話になります。
シナリオC:ソフトウェア供給に特化
自社で車を売るのではなく、ソニーとホンダの「AFEELA」のように、日本の自動車メーカーと提携して「OSや車内エンターテインメントシステム」だけを供給する形です。これなら安全性のリスクを負わずに、シャオミの強みを日本市場に展開できます。
結論:日本導入はどうなるか分からない
Xiaomi SU7 Ultraは、確かに自動車の歴史を塗り替える可能性を秘めた刺激的な一台です。しかし、「命を乗せる機械」としての成熟度という点では、まだ多くの課題を抱えているのが現実です。
「スマホのように車を作る」というシャオミの挑戦は称賛されるべきですが、そのスピード感が日本の法規制や安全基準と合致するには、まだ長い年月が必要でしょう。日本発売を夢見るファンにとっては、今はまだ「画面の中の憧れ」として楽しむのが、最も賢明な付き合い方かもしれません。
今後、シャオミが中国国内での事故調査にどう向き合い、どのように安全性を証明していくのか。その姿勢こそが、日本上陸への唯一の切符となると考えてます。

